木枯らし舞う
《木枯らし舞う》1997(平成9)年制作・東山魁夷85歳
麻布・彩色 92.0cm×120.0cm/長野県立美術館・東山魁夷館 蔵
秋の終末を告げるフィナーレ
秋も終わりに近い頃、私は一人、北の果ての静かな森に入って行った。重いスケッチブックを肩に細い道を登る。すると一陣の風が、それも激しい勢いで眼前を横切った。目をあげると周囲の林の梢から黄金色の葉が、いっせいに落ちて空中に舞い上がった。秋の終末を告げるフィナーレのように華やかで淋しい一瞬である。私は、しばらくこの落葉で身体中が包まれてゆくのを感じながら佇んでいた。
『第29回日展アートガイド』